インボイス対応② ~非課税業者の家主様がインボイス登録されない場合の対処方法~【制度前と賃料同額計算方法】

2023年09月29日
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前回ブログ の条件4の文末「賃借人(テナント)が消費税を余分に負担することとなる為、当然に賃料の値引きを要求されることもあるかと思われます。よって、賃料交渉との形で協議することが考えられます。」について、
参考 : 別途消費税の賃料を同額とする割引賃料計算式は以下の通りとなります。

 

令和5年10月1日以降の3年間 (例:賃料500,000円の場合で家主様インボイス届出しないとした時、テナント支払賃料をインボイス制度前と同額とする計算方法)

割引賃料 = 税抜き賃料×0.02/1.02
【税別賃料500,000円の場合】500,000円×0.02/1.02 = 9,804円(四捨五入の場合)
・・・500,000円税抜き賃料を490,196円とすることになります。
(単純に 税抜賃料500,000円は    500,000円/1.02=490,196円です。)
☞逆算確認: 490,196円 + 9,804円(49,019円×20%) = 500,000円(税抜き支払額が同額)

(テナント側)インボイス対応税抜き賃料 =インボイス前の税抜き賃料-インボイス前の税抜き賃料×0.02/1.02
インボイス前の税抜き賃料/1.02  または  インボイス前の税抜×0.98039215686
1,000万円以下の免税業者家主様対応の為、月額税抜き賃料833,334円以上の家主様には関係ないため、
(テナント側)インボイス対応税抜き賃料=インボイス前の税抜き賃料×0.980392となります。

●令和8年10月1日以降の3年間 (例:賃料500,000円の場合で家主様インボイス届出しないとした時、テナント支払賃料をインボイス制度前と同額とする計算方法)

割引賃料= 税抜き賃料×0.05/1.05
【税別賃料500,000円の場合】500,000円×0.05/1.05 = 23,810円(四捨五入の場合)
・・・500,000円税抜き賃料を476,190円とすることになります。
(単純に 税抜賃料500,000円は    500,000円/1.05=476,190円です。)
☞逆算確認: 476,190円 + 23,810円(47,619円×50%) = 500,000円(税抜き支払額が同額)

(テナント側)インボイス対応税抜き賃料(令和8年10月1日以降の3年間)
インボイス前の税抜き賃料/1.05  または  インボイス前の税抜き賃料×0.9523809となります。

●令和11年10月1日以降 (例:賃料500,000円の場合で家主様インボイス届出しないとした時、テナント支払賃料をインボイス制度前と同額とする計算方法)

割引賃料= 税抜き賃料×0.10/1.10
【税別賃料500,000円の場合】500,000円×0.10/1.10 = 45,455円(四捨五入の場合)
・・・500,000円税抜き賃料を454,545円とすることになります。
(単純に 税抜賃料500,000円は    500,000円/1.10=454,545円です。)
☞逆算確認: 454,545円 + 45,455円 = 500,000円(税抜き支払額が同額)

(テナント側)インボイス対応税抜き賃料(令和11年10月1日以降)
インボイス前の税抜き賃料/1.1   または  インボイス前の税抜き賃料×0.9090909となります。

上記計算式は、インボイスの届け出をされない免税業者家主様に対して、テナント側から見た支払い賃料をインボイス前と同額とする計算方法の考え方です。
現在の税法では家主様に強制できるものではありませんので、税理士さんとご相談の上参考としてご利用ください。

インボイス対応① ~不動産業者としての弊社の考え方~

2023年09月29日
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弊社は事業用物件(貸倉庫、貸土地)を専門に扱う不動産仲介・管理業を行っていますが、
今月に入って、インボイスに関する質問が激増しています。

・家主様からは「どう対応したらよいか」
・テナント様からは「家主様のインボイス登録番号を教えてほしい」
・家主税理士様からは「家主様は非課税業者であるが今後どのように対応すべきか」

…など、管理会社として様々な質問がきています。

10月からのインボイス制度開始について、今後家主様の立場から見た
インボイス制度に対する届け出方法を下記にまとめます。

 

◆条件1◆ 家主様がすでに課税業者である場合(インボイス制度による問題発生しない)

課税売上高が1,000万円を超える家主様
(注:貸土地、居住用賃貸等で消費税非課税の収入は1,000万円に合算されない)
・・・インボイス登録申請をしてもらう。
適格請求書発行事業者の登録番号を取得してもらいテナントに通知。
【結果】家主様は今まで通り消費税課税。・・・インボイス登録申請をしてもらうとの手間だけである。

 

◆条件2◆ 家主様の主たる業が家主業であり年5,000万円以下の売上である場合(インボイス制度による問題発生しない)

すでに「簡易課税制度選択届出書」を提出されているはずである。
不動産賃貸業はみなし仕入れ率40%に付き、実質テナントから受領した消費税10%の60%分を納付することとなっている。
・・・インボイス登録申請をしてもらう。
適格請求書発行事業者の登録番号を取得してもらいテナントに通知。
【結果】家主様は今まで通り消費税課税。・・・インボイス登録申請をしてもらうとの手間だけである。

≪参考ページ≫
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6505.htm
事業区分 みなし仕入率 不動産業は第6種事業40%

 

◆条件3◆ 家主様が消費税免税業者である場合(インボイス制度による問題発生する場合あり)

※今回のインボイス制度で一番問題が発生することとなった家主様

課税売上高が1,000万円以下である家主様
(注:貸土地、居住用賃貸等で消費税非課税の収入は1,000万円に合算されない)
・・・インボイス登録申請をせず、10月以降のテナント要望あった場合に協議・対応。
【結果】家主様は今まで通り消費税免税業者である為、消費税を納めることなし。
 ※ただしこの場合、賃借人(テナント)の売り上げによって賃借人の消費税納付について影響を受ける場合・受けない場合が出てきます。

●賃借人(テナント)影響を受けない場合(インボイス制度による問題発生なし)
 賃借人年5,000万円以下の売上である場合かつ、簡易課税選択されていれば、インボイス登録番号を必要としない。
 ・・・家主様がインボイス登録申請をしなくとも不利益なし。

●賃借人(テナント)影響を受ける場合(インボイス制度による問題発生あり)
 賃借人年5,000万円超える売上または簡易課税選択していない場合、インボイス登録を家主様がしないことで下記不利益を受ける。
 ・・・令和5年10月1日から令和8年9月30日までの当初3年間は消費税:仕入税額控除80%(20%分テナント負担)
 ・・・令和8年10月1日から令和11年9月30日までは消費税:仕入税額控除50%。(50%分テナント負担)
 ・・・令和11年10月1日以降:仕入税額控除0%。(100%分テナント負担)

 

◆条件4◆ 消費税免税業者である家主様がインボイス登録申請をせず、テナントが消費税追加負担となった場合(インボイス制度による問題発生する場合あり)

●賃借人(テナント)からどうしても、家主様にインボイス登録申請をしてほしいと要望された場合の対応

三基建設選択肢①
・・・家主様にテナント消費税追加負担することになることを説明し、インボイス登録申請をしてもらう。

※ただし法的には強制できないこととなっている。…税務署にも直接確認しました、今回の最大の問題点です。

【結果】消費税を納付することになるが、2割特例(インボイス発行事業者となる小規模事業者に対する負担軽減措置)がある為、令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する各課税期間(個人であれば令和8年12月末まで)については、みなし仕入れ率80%が適用される。

≪参考ページ≫
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/shohi/kaisei/202304/01.htm
令和8年10月1日以降については「簡易課税制度選択届出書」を提出しておき、不動産賃貸業のみなし仕入れ率40%に付き、実質テナントから受領した消費税10%の60%分を納付することとなる。


三基建設選択肢②
・・・テナント消費税追加負担することになることを説明しても、家主様が消費税納付に関する手間がかかること、免税業者のままとして今後も消費税納付をする意思がないと言われた場合。
インボイス登録申請を強制することはできない法律(税務署再度確認しました)となっている為、賃借人(テナント)に家主様の意向をお伝えして理解を得るしかない。

この場合、テナントは
 ・・・令和5年10月1日から令和8年9月30日までの当初3年間は消費税:仕入税額控除80%(20%分テナント負担)
 ・・・令和8年10月1日から令和11年9月30日までは消費税:仕入税額控除50%。(50%分テナント負担)
 ・・・令和11年10月1日以降:仕入税額控除0%。(100%分テナント負担)

賃借人(テナント)が消費税を余分に負担することとなる為、当然に賃料の値引きを要求されることもあるかと思われます。よって、賃料交渉との形で協議することが考えられます。

【リンク】
家主様インボイス届出しないとした時、テナント支払賃料をインボイス制度前と同額とする計算方法

いずれにしても、インボイス制度は納税者の立場を考えられていない、納税者の手間と負担を増やす制度と感じます。何よりもインボイス届け出を強制する法なく、令和5年10月1日から3年間毎に消費税:仕入税額控除20%分、50%、100%分認めないとして、家主様とテナントの力関係によっては、実質テナントに段階的な負担増となる、だまし、だまし、結果増税となる税法ではないかと思います。
収めた税金が有効に使われていることを証明さえすれば、納税者も応分の負担増も受け入れられるものを…
とも思ってしまいます。

【インボイス制度が始まります】消費税免税家主様は、契約書作成時にご注意を!

2021年05月13日
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インボイス制度が始まります

リンク
インボイス対応① ~不動産業者としての弊社の考え方~2023/09/29

インボイス対応② ~非課税業者の家主様がインボイス登録されない場合の対処方法:計算式~2023/09/29

弊社は、倉庫・工場等の賃貸・売買の仲介を行っていますが、度々消費税についての課税・非課税・免税業者(課税売上高が1,000万円以下消費税納税義務が免除)について質問を受ける場合があります。

特に、免税業者となる家主様に対する消費税の扱いについて借主様から疑問視される場合も出てきます。
このことに関連して、令和5年10月1日からは「適格請求書等保存方式(インボイス制度)」が導入されるようです。
・・・本年(令和3年)10月1日からはインボイス登録業者、登録申請書の受付も開始されます。

インボイス制度を貸倉庫・工場に当てはめれば、
<貸主側>
 貸主は、借主(課税事業者)から求められたときは、インボイスを交付しなければなりません。
<借主側>
 借主は消費税控除の適用を受けるために、原則として、貸主である登録事業者から交付を受けたインボイス(※)の保存等が必要となります。
(※)借主は、自らが作成した仕入明細書等のうち、一定の事項(インボイスに記載が必要な事項)が記載され取引相手の確認を受けたものを保存することで、消費税控除の適用を受けることもできます。

インボイス制度が導入されると、免税業者である家主は適格請求書(インボイス)を発行することができず、免税業者家主へ支払ったとする消費税は借主の支払い消費税として税額控除できなくなります。
よって、現在貸倉庫・貸工場等の事業用建物を賃貸される場合には、免税業者であるから、契約賃料は消費税込と契約書に記入し作成した場合
令和5年10月1日以降は、借主は貸主に適格請求書(インボイス)を求めることになり貸主は適格請求書(インボイス)を提出できず、結果消費税相当額の賃料値下げを求められることが予想されます。
建物賃貸借契約書において注意が必要となります。

・・・弊社では、家主様が免税業者であっても、消費税別途請求を基本とさせていただいております。